田辺 聖子
こちらはまるっきり……なんというか、お遊びと言った呈の小説です。
後ろ書きにあるのですが、田辺聖子さんはかなり斬新な「新源氏物語」を書いておられまして、ただそれはあくまでも「正本源氏」という感じ。
(とはいえ、完読はしてないのですが……汗)
で、「原典を読んでるとこんなものが書きたくてたまらなくなる」とのことで書かれたのがこの「私本源氏物語」です。
お話はそれぞれの女性とのお話を、源氏の従者の「髭の伴男」の視点から描く、という形に加えて、まぁなんというか……女性達も独特の変貌を遂げています。
あくまでも「たおやかな平安絵巻」的源氏物語をお好みの方にはオススメできませんが、ノリツッコミのお好きな方、あるいは田辺聖子さんと同じように、どうにも源氏的物語、嫌いじゃないけどむずむずする、と言う方にはぜひ読んでいただきたいと思います。
源典侍に関しては、私自身もサイトの小説で書く気でおりますが、修理の太夫との関係、あさきゆめみしなんかと同じオチなのですが、雰囲気は全く違い、思わずクスクスと笑ってしまいそうな感じです。
花散る里は、私は源氏の中ではそんなに好きな女性ではないのですが(好感は持ちますけれど、「この人いいわぁ」と言う風には萌えられない)、こっちの花散る里はとても好きです。
何よりも食べ物の描写がおいしそうで、この当時、今昔物語だったでしょうか、芋粥のお話があったと思うのですが、そのお話を思い出しました。
きっと田辺聖子さんも食べることが大好きで、この花散る里はすごく楽しく書いたのだろうな、とそんなことを想像してしまうお話です。
少なくとも、この時代の食への好奇心がないと、ここまで書けないよな、とともかく感服です。
思わずここに出てくるメニューを再現してみたくなるお話です。
他のお話も、どっちかと言えば原典のイメージを裏切る方向で進んでますのでそれだけはご注意。でも私はこんなお話が結構好きだったりするのです。