さて、ここで、私は声を大にして言いたいことがあります。
今までも色んなところで口にしてきた、このお話。「もう聞いたよ~」という方はご勘弁くださいな。
それは何かというと。
「源氏物語は最古のキャラ萌え小説でもある」ということでございます。
何言ってんだ、源氏のテーマは諸行無常盛者必衰だ、という方もいらっしゃるかもしれないし、いや因果応報だとか、そんなことをおっしゃる方もいらっしゃるかもしれないのですが。
源氏のお話を読むと、どうも私には紫式部自身はともかく、周りの思惑とか話の進み方とかが、今のオンライン小説にダブって仕方がない部分があるのです。
成立は平安の「惚れた腫れた」に現を抜かしていた、ある意味平和な貴族社会の女房達(ちなみにこれはすごいことです。誉めてます)。当然ある程度閉鎖的で、文化的にも一定のレベルと共通点を持っていた人たちの集まりであったはずの「サロン」です。
これは今の日本の情勢と、多分近い。
思うに……最初から、ある程度のストーリーは決めて、書いていたのではと思うのですが、それ以上にちらっとだしたキャラが妙に人気になってしまって、「ねぇ、あの方はどうなったの?」とか「あの方の続きはないの?」とか、そんな周りのおねだり(リクエスト)――あるいは場合によっては道長や彰子の「命令」もしくは「指示」もあったかもしれません――に、「じゃあ、こんなお話はどう?」と書き足していった部分が、少なからずあるのでは、とそんなことを思ったりするのです。
(こういう部分って、今のオンライン小説でもすごくあることだと思うのです)
それは紫式部が最初から望んだことではなかったかもしれないけれど、結果的にはそれがとても読者の共感や支持を得た。だから源氏物語が1000年の名作足りえたと、そう思うのです。
考えても見てください。
印刷の技術のない当時、複製を作るのは手作業でした。
最初は原本ただ一つ、一部のみなのです。
もちろん1部が2部に、2部が4部に、という増え方はしたのでしょうけれど、当時の人に圧倒的な支持をされなければ、そんな増え方はしないでしょう。
そして今もそのお話を読むことができるということは、当時どれだけの複製があったということなのか。数冊しかなかったら、それがどんなに名作であったとしても、千年の時を待たずに消滅したと思うのです。
逆に言えば、これだけのものが残っているということが、当時すでに圧倒的な人気を誇っていたということの証拠では、と思うわけです。
そしてその理由が、この豊富なキャラたちにあるのでは、とそう思うのです。
お話を知っている人たちは、おそらく誰でも一人や二人は好きなキャラ、反対に好きになれないキャラがいるのではないかと思います。
それは単純に主人公の「光源氏」が誰からも愛され、敵役の「弘徽殿の皇太后」が誰からも嫌われるという話ではなく、それ以外の色々な登場人物たちに、ひいきの読者がいて、それが源氏物語の人気を支えていた、とそう思うのです。
前回の話に続きます。
源氏物語は、バラしても面白い。
それはこの、「キャラ」たちの個性にかなりの部分を負っていると思います。
単独のアイドルよりも、グループの方が面白くて、息も長かったりする、そんな今の芸能界をちょっとだけ髣髴とさせる……そんなことを思います。