ボジョレーは女三宮の可憐さで ~ワインと源氏物語~11月

ヌーヴォーと牡蠣のベーコン巻き

秋、11月の第3週と言えば、ボジョレーヌーヴォーの解禁日。ワインラヴァーにとってはもちろん、そこまででもない方にとっても、テレビなどで多く放映されますし、そういうことがあることは知ってるという方も多いのではないのでしょうか?

ボジョレーヌーヴォーとは

詳しくは以前の記事をご参照いただきたいのですが

さて、今週11月の第3週、と言えば、毎年恒例、ボジョレーヌーヴォーの解禁日が木曜日に迫っています。この時期になると、「え? ワイン詳しいの?...

端的に言うと、「フランスのボジョレーという所で作られたワインの新酒」となります。
このボジョレー地区、フランスでも「王」と呼ばれる大変有名な銘醸地と同じく、ブルゴーニュ地方に位置しています。

ブルゴーニュ地方って、どんなワインがあるの? と言われれば、ボジョレーヌーヴォーとは別の意味で有名な「ロマネコンティ」などがありますね。最も高いワインなどと言われるワインです。

そんな銘醸地と同じ地域にありながら、ボジョレー地区はいろいろと「違う」地区なんです。

女三宮ってどういう人?

ここで取り上げた女三宮は、光源氏の異母兄、朱雀帝の女三宮です。三宮、というのは天皇の3番目のお子さん、女性なので女が付き、女性で3番目のお子さん、ということからこの名前が付いています。
(のちに宇治十帖で出てくる匂宮も、明石中宮の三宮。こちらは男性なので、ただの「三宮」と呼ばれます)

女三宮という名前からもわかるように、上に姉が二人いるのですが、このうち2番目の姉は「柏木の中将(この先柏木で統一します)」の奥さんになっており、のちに夕霧と再婚します。

女三宮という女性がどういう女性だったかという以前に、この柏木がいろいろしちゃったおかげで、女三宮はその人間性よりも、物語に巻き込まれた感が強い登場人物、になっている気がします。

というのも、この柏木、もともと女三宮と結婚したかったんですが、彼がまだ若く、三宮は三宮で頼りない女性だったということから、お父さんの朱雀帝が、柏木にくれてやることを許さず、そもそも女二宮との結婚も「三宮がダメなら、二宮で」みたいなところがあるようなんですね。なんてやつだ!

ですが、二宮と結婚しても三宮への思いは冷めず、結局密通事件を起こしてしまいます(そして生まれたのが、先にご紹介した匂宮と同じく、宇治十帖の主役の一人、薫です)
密通というからには、この時女三宮も結婚していたわけですが、この相手が光源氏。

そう、お父さんの朱雀帝、柏木には許さなかったのですが「光源氏なら弟だし、しっかりしてるし(そりゃ、時の人ですからね)、女三宮の面倒、ちゃんと見てくれそう」という理由で、光源氏に女三宮を嫁がせてしまったのです。
親心とはいえ、このことがのちの柏木の密通事件、紫の上の心痛を引き起こすわけで、罪な話だと思います。

さてさて、そういう「波乱万丈」な設定ばかりが目立つ女三宮。どういう女性だったかというと……

幼くて

この「幼い」という言葉が女三宮の評価にはとても良く出てきます。キーワードかも知れないですね。先ほど説明した登場人物の中で幼くてと言えるのは「女二宮でもいっかー」と結婚した柏木に若干の幼さを感じるものの「手を打つ」「我慢する」という感じもあり、政治家としてのしたたかさも感じます。
が、女三宮、本当に「流されるだけ」の気がしませんか?

思うに、彼女は宮中でも浮いていたんじゃないかと思うんですよ。というのも当時の女宮、結婚しないこともまぁあったようなのですよね。それが朱雀帝が「光源氏に降嫁」させたというのは「一人でいさせておくのは心配」という感じがあったようなのです。おそらく本人は「優しいお父さんの元で、何も考えず、ほわーっと一生過ごせたらそれでいいのに」とか思っていたかも知れませんが、「そういうわけにもいかないんだよ」って感じでしょうか。

ボジョレー地区

そんな雰囲気が、名高い銘醸地、ブルゴーニュの中で、ちょっと異質なボジョレー地区と少し重なって見えるのです。

そもそも、ブルゴーニュ地方の赤ワインと言えばピノ・ノワールという赤ぶどうの単一品種で作られるワイン。一方でこのボジョレー地区だけは「ガメイ」という品種を使って作られます。
また、ボジョレー地区はヌーヴォーが有名なのですが、通常のワインも作られている……にもかかわらず、ヌーヴォーばかりが有名。

彼女の本質的な魅力ではなく、名前(女三宮であるということ)ばかりが目立つ、そんな女三宮に、ここもなんとなく被るなぁ、と。

味わいの特徴

ちなみにこのボジョレー、そもそもがピノ・ノワールで作られる銘醸ワインとはもちろん全然違うワインですが、これはこれで美味しいというか、カジュアルで、印象としてはとても「可愛い」ワインです。
ボジョレーヌーヴォーもそういう感じですよね。フレッシュで、ちょっと華奢で、ベリーやすみれの、ちょっとキッチュで可愛い感じのワイン。
ヌーヴォーの陰に埋もれがちですが、通常のボジョレーはヌーヴォーの青みが減り、きれいな赤が印象的な、カジュアルなワインです。

他のワインに埋もれがちですが、大き目のワインショップでは取り扱いもあるはず。興味がある方はぜひ飲んでみていただきたいと思います。

本日もお読みいただきまして、ありがとうございます。

如月 ローズ
文章も書く、ソムリエ料理研究家
岡山県のスーパーマーケットで販促のお仕事をしています。社内での講師を中心に酒と食の楽しさをお伝えしています。
*お酒と料理で豊かな食を
毎日の食をもっと充実させたい、あるいはさせたいと思っているけれど、イマイチ充実しない……そんな思いを抱いていませんか? そんな毎日を、ちょっとしたアイディアや情報をご提案することで、ストレスなく幸せな食生活、――ひいては幸せな毎日を過ごしていただきたい、そんな思いで運営しています。

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