松江のホーランエンヤ、正式名称 松江城山稲荷神社式年神幸祭 の三つ目の記事は、引き続き五大地、残りの二つのお話です。
前回の記事はこちら
5月の26日、還御祭に行ってきました。10年に一度の神事ですし、ちゃんと見たのは今回初めて。前日の大学の同窓会では、先輩たちから色々な話も聞けて、しっかりお勉強をしてからの当日となりました。
そういった予習の中で、今回初めて耳にしたのが五大地。
それぞれのエリアでとても特徴もあり、色々感慨深かったので、記憶と共に思うことなど……
Contents
五大地 その②
矢田
五大地の船が順番にくる中、4つ目は矢田の櫂伝馬船でした。
こちらの地区は、五大地の中でも、もっとも人口が減っており、今回も危ぶまれた中での参加ということでした。外からのフォローもあったと聞いています。
また、この船の櫂かきの中には、一緒に見ていた研究室の先輩の同級生の方がいらっしゃったそうで、先輩は大声でその方の名前を呼び、おそらく聞こえたのでしょう、一人の方がくるっと振り返って、手を振られたのが印象的でした。
今回の観覧の前日、松江市の観光に携わっている先輩から、参加する人は 本当に 一年くらい前から練習をして、学業や仕事も犠牲にしながらの参加なので惜しみない拍手を送ってほしい、と言われていたのですが、先輩の同級生、という身近な存在で(その方は他のエリアから婿に入られたそうですが、櫂伝馬船に乗ると決まった時、その義理のおばあさんが「我が家から乗る者が出るなんて」と手を合わせられたそうです)そういう地域文化をになっている方がいる、ということの重さを感じました。
馬潟
最後は馬潟です。
馬潟は、そもそもの五大地の始まり、文化五年(1808年)、式年神幸祭が始まってから160年後、今から211年前に行われた神幸祭の時に、風雨が激しくなり、神輿船が危険な状態になったのを、馬潟の漁師さんが助けに向かって、無事送り届けた、ということから始まったそうです。
その後4エリアが順次加わっていき、今の五大地になったということなのですが、その最初の功績で、5大地の中で「紫の旗」を掲げることを許されている、ということのようです(幟は他地区でも紫を見ましたが、旗/下の写真参照は確かに馬潟だけだった気がします)
当時の馬潟に思いを馳せる
実は私、このエピソードにかなり感銘を受けました。
というのも、当時、もちろんテレビもSNSもなかった時代。天気予報ももちろんなかったでしょう。
風雨が激しいということは、嵐のようなものだったのでしょうか?
そんな中、一つは「今日が神輿が行く日だよな」と馬潟地区の漁師の方がご存知だったこと。10年に一度の、自分たちの近くを、松江のお城の神様の御神輿船が通る、ということを知っていたこと。
今のホーランエンヤは、五大地の櫂伝馬船などがあり、華やかな神事ですが、当時はどのくらいのものだったのでしょうか?
由来からすると、豊作祈願(稲荷社ですから、お米ですね)ですが、それを「漁師の方」がご存知だったということ(先輩によると、当時のこの辺りは半漁半農が多かったんじゃないかとのことですが)
それからもう一つは、そんな激しい、神輿船も危ないような風雨の中を「助けに行かなければいけない」と誰かが言い出して、そして誰かが「そうだな」と言って助けに行ったということ。
当時は先に書いたように、テレビも天気予報もない時代。その風雨がどのくらい激しくなり、どのくらい危険なのかなんてわからない時代に、「豊作祈願の神輿船を、漁師さんが」「自分たちの命すら、ヘタすれば危ないのに」「誰かが助けなきゃと言って」助けに行った、のだと思うのです。
そんな気概を感じたからこそ(先輩曰く、ヘタしたら無礼者で切り捨てられていたかも知れないのだから、そのリスクも冒して助けに行ったんだよな~)曳舟を任されたのだし、今に続く華やかなこの行事につながっているのだと思います。
伝統を守るということ
矢田の所でも書いたように、松江市とは言え、このエリアは人口減も激しい所です。そんな中で、この伝統は守らなきゃ、という地区の方の思いがあること。
また、話の中で出てきたんですが、やはり負担はあるよね、ということ。だからこそ10年に一度ということのありがたみであり、だから続けていける、という部分があるのかなと思います。
今回のホーランエンヤは、9時間生中継をした地元のテレビなどもあったようで(そして著名人のゲストも)さすがめったにない神事ならではの空気でしたが、また次のホーランエンヤもぜひ(今度はフルコースで)見たいし、結局行けていないホーランエンヤ伝承館も行きたいと思いました。
https://matsu-reki.jp/ho-ranenya/ホーランエンヤの記事、もう少し続きます。
本日もお読みいただきましてありがとうございます。
文章も書く、ソムリエ料理研究家
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